KigenさまのPenguin'sCafe素材と、碧谷の雲母シリーズのスピンオフです。
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先日、お年頃のご婦人がご来店されました。 きちんとした身なりの、きちんとしたご婦人とお見受けしました。 ただ、随分と凍えていらしたようでした。お身体だけなのか、はたまたお心もであったのか……窺い知ることは出来ませんでした。ただ、凍えておいでだということだけは確かでした。 一先ず、上着をお預かりして暖かい暖炉の傍のお席(あまり使用していない、オットマン付のソファー席)にご案内するように指示を出し、急いでお飲み物をご用意します。 ――何か、内側から温まるようなものを。 ――そう、温かいホットミルク、それに、バニラ・エクストラクトを一垂らし。 そうして、オットマンに足を乗せて暖炉に手をかざしておられるご婦人の下へ。 勿論、このお飲み物はサービスです。 当店自慢のメニューをお楽しみいただくには、まずは落ち着いて、温まっていただくべき、でしょうから。 そっと差し出したら、静かに頭を下げてから下がらせていただきました。 しばらくして、どうしておいでだろうかと見てみると……いつの間にやら、ちび達が。 何がどうなってああもわらわらと……いや、なんだ? 何か妙な―― 慌てて、少し困ったような、くすぐったいようなお顔をされたご婦人の元へ。 どうやら、私が下がってすぐにやってきたちび達にねだられ、ホットミルクを少々飲ませてやってくださった、とのこと。 流石に、ちび達にバニラ・エクストラクトは早かったようで、まぁ皆見事に撃沈してしまったそうな。 まぁ、少なくとも癒し隊としての役には立ったようですから、起きるまではそのままにしておいてやりましたよ。 勿論、後で雷は落とさせてもらいましたが、ね。