KigenさまのPenguin'sCafe素材と、碧谷の雲母シリーズのスピンオフです。
トップ > 雑記集 > 癒し隊のはじまり(ホール長)
あれはもう随分前になりますでしょうか。 経理がまだまだ卵の殻をかぶったヒヨっ子でしたからねぇ……私などにはついこの間のような気もいたしますが、やはりそれなりに時間はたっているのでしょう。 あの頃は開店したてで慣れない忙しさも抜け、知名度も上がったのか良くいらしてくださるお客さまも増えてしばらく経っていた筈です。そろそろ従業員も増やすか、いや、そもそも目新しさもなく飽きられてやしないかという時期。 時間的な余裕が出来た所為か、ひょっこりと店長に子供が出来ました。後の経理です。 店もある子育てもあるというのに店長は寧ろ店一筋の性分ですからねぇ……ほとんど母親が、時折私が面倒を見ていたものです。 お客さまにご迷惑をおかけしたり、ご不快にさせてはならないと、常々店表には出ないようにと言って聞かせていた筈なのですが……そこはそれ、ヒヨっ子ですから。目を放した隙にホールに出てしまいまして。 それがまた、よりにもよってオーナーがいらしている時に。 あの時は本当に、本当に本当に、怒りに我を忘れそうな店長を止めるのがどれだけ……■■■■…… ああ、動揺してインク染みを付けてしまいました。裏以降に染みていないと良いのですが。 とにかく、まだまだ小さかったあの子がよたよたとオーナーの足元へ行って、ぽてっと尻餅をついたと思ったら、オーナーの足に寄りかかってしまったのです。 もう、店長は鬼の形相ですし、抑えるのに必死であの子の回収もできませんし、正直途方にくれる思いでした。 すると、何を思われたのか、オーナーがひょい、と片手であの子を抱き上げられたのです。 そのまま、お膝に乗せられ、とん、とん、とん、とん、と、あやしてやってくださっているようでした。 お帰りになられる際にも軽く頭をなでてやってくださり、店長などああなんとお心の広いことかと感銘を受けておりました。 私どもとしては、2度とあのようにお手を煩わせてはいけないと、今度こそ店表には出ないようにと徹底していたのです。 ところが。 その次に見えられた折に、オーナーは何やらじっと伺うような素振りをなさいます。前回とは異なり、それまで通りにおもてなしするだけではご満足いただけぬご様子です。ついには万策尽きてしまい、あの子を連れてまいりました。 すると、どうでしょうか。 オーナーはそっと受け取り、またお膝に乗せられ、あやしてくださったのです! しかも、随分とご満足げなご様子でした。 そんなことが何度か続き、時には、お疲れが溜まっておいでだったのかそのまま休まれるようなこともございました。 その後、他のお客さま方もご希望らしいということで、他のちび達も含めて店表に出すようになったのです。 これが、ちびっ子癒し隊のはじまりなのです。