オレは、店長の長男だ。
それなりに愛されていたのかもしれないが、親父の一番はいつだってあの方、オーナー。物心ついてすぐ、そのことに気付いた。気付かされた。お仕えする心得と、簿記やなんかの、経理の仕事に必要な諸々を叩き込まれ始めたからだ。決して間違いがあってはならないから? そんな事オレが知るか!
ムカついてムカついて、いっそグレてやろうと家を飛び出して、イワトビの連中とツルんでいたこともある。なんでイワトビかって? カッコよく見えたからなぁ。まぁ、アレだ。若気の至りというヤツだ。
結局、オレは家……っつーか、店に戻り、経理の仕事に就いた。実際やりだすと結構、いや、かなりおもしろい。チーフの叔父き含めパティシエ連中とはちょくちょくぶつかるが、まぁ、性に合ってるんだろう。
とりあえず、親父みたいな親にはならんように、とだけは思ってるけどな!