悪魔と人鳥

KigenさまのPenguin'sCafe素材と、碧谷の雲母シリーズのスピンオフです。

1.店長(1)

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 500年前、忘れもしない。あれは、皆で順に移動していた時のことだった。視界の悪い吹雪の中だった筈が、不意にあの方の姿が目に飛び込んできた。それまでには見たこともないようなお姿で、あり得ない程鮮明に。
 あんまり驚いたので、思わず口開けて立ちすくんでしまった。すると、後ろを歩いていた弟たちがそんなわしにぶつかった。そして、ようやくあの方に気付いたかと思うと、同じように立ちすくんでしまった。下の弟に至っては驚きすぎて、わしにしがみついて首だけを伸ばしていた。
 今思えば、わしらは既に惹きつけられていたんだろう。そんなわしらを見て、あの方がふ、と口元に笑みを穿かれた。そして、尋ねられた。

 ――小さき者達よ、我が為に生くる気はあるか?

と。
 勿論、わしらは即答した。否やなんぞ有ろう筈もない。

 ――我と共に、我が為に生きよ。

 あの方がわしらに手を翳されて、ほんのりと身体が温うなった。


 そうして、わしらはそれまで出来ずに居た諸々のことが出来るようになった。

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