あの頃、あの方は日々の暮らしに飽いておいでのようだった。わしらは、そんなあの方をお慰めしようと、懸命にお仕えした。そうして、不意に気付く。
同じ頃に産まれた仲間がどんどん死んでいっていたことに。
わしらにはまだそんな気配はなかったが、いつかは、死ぬだろうということに。
わしらが死んだら、あの方はまたお一人になられるのではないかということに。
丁度いいことに、わしらにはその頃、恋人が居た。わしらは迷わずその恋人を妻として迎え、子を作ることに決めた。
さすれば、子や孫や曾孫、玄孫、代々繋がってゆく。きっと、途絶えることなくあの方のお傍にお仕えできる。そう、想った。
それから幾年。
子供らは代を重ねる毎、寿命が短くなるようだった。先立たれるのは哀しい。哀しいが、子供らが精一杯生きていく姿を見届けられることに、徐々に満足するようになっていった。
何より、変わらずあの方にお仕えできる。
わしらは、この身体が保つ限り精一杯あの方にお仕えしよう。
それが、わしらに力を与えて下さったあの方への、せめてものご恩返しであり。
わしらにとって、堪えようもない喜びなのだから。