――ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、コトリ。
トレーを片手に戻ってきた店員が、テーブルの上を整えてゆく。
――おや、これは?
彼が頼んだのはオリジナルブレンドの紅茶のみ。しかしながら、その傍らには幾つものチョコレートが。
――店長からです、サー。この店が出来て、丁度500年目だから、と。
眉を上げた彼に、店員は思念でそう伝えるとペコリ、と頭を下げた。
――そうか。わざわざ数えるとは律儀なものだ。
ふ、と口元を綻ばせ、チョコレートを摘み上げる。含むと、ふわりと口内にコアントローの香りが広がった。
店員は再びペコリ、と頭を下げると、テーブルを離れホールへと戻って行った。
そう、これは悠久の時を越え、静かなカフェで紡がれる悪魔と人鳥の物語――。